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 Commentary by Dr.Lake

 
まずは「Dumble-Amp」について解る範囲で説明したいと思います。解る範囲というのは、ご存知の通りDumbleは個人ビルダーであるため一般流通しておらず、全般に秘密が貫かれており、極めて情報の少ない、実に秘密めいたアンプだからです。

「Dumble-Amp」とはアメリカ、カリフォルニアにて「故:Mr.アレクサンダー・ハワード・ダンブル」により60年代頃から個人で製作されていたハンドビルドアンプです。
生産台数は極めて少なく、新品といっても知人や、自分が音楽性を認めたミュージシャンのためだけにオーダーを製作するという製作スタイルで多くが造られており、楽器店などでは取り扱うことが出来ない(一般流通されていない)ものでした。
かなりこだわりが強く、製作を依頼しても完成はいつになるか分からない。しかし、その素晴らしさにオーダー依頼絶えず常に待ち状態でした。またその個人依頼での製作ゆえ、音もその人の音楽性によりカスタマイズされており、同じ種類のアンプでも音が少しずつ違うのが通常でした。

ラリーカールトンやロベンフォードなどの使用で一般のミュージシャンにも存在が知られるようになりましたが、ベンチャーズを初め、、スティーヴィー・レイ・ヴォーンやカルロス・サンタナ、エリック・クラプトン、エリック・ジョンソン、スコット・ヘンダーソン、マイケル・ランドー、レニー・クラヴィッツ、クリストファー・クロス、ローウェル・ジョージ etc.. 多くのハイエンドは顧客たちの隠れ家的アンプ技術者として評価を得ていました。

次にダンブルアンプの基本的な音質についてですが、大きく分けて「70s-80s」、「90s」の音に分ける事が出来ると思います。「70s-80s」はFender系の音、これは製作当初からFenderのパーツを使用していた事や、オールドのFenderアンプを探し、その部品を使い製作されたということも有り、当時のダンブルにはFenderの部品が実際にかなり多く使われていました。
余談ですが、良いFenderアンプを探すのに時間がかかり、その為多大な製作日数がかかったと言う話も有るほどです。

使用者で有名なラリーカールトンやロベンフォードの「歪んでいてもクリーンな音」と言われる特徴ある80s以降の音はこのDumble「70s-80s」の音なのです。 「どこから歪んだのか解らないクリーンと歪の境い目が綺麗」、そして「弾くより速く音が出る」「クリーンなままで美しいサスティーン」「演奏者は表現のみに集中できる」と言われるアンプこそがこのDumble-Ampなのです。

そしてダンブルも「80s~90s」に入るとEL-34仕様のアンプが作られる様になって来ます。よりシャープで立ち上がりが早く歪も強くなります。推測するに近年のミュージッシャンがよりMarshall系の音を望んでいるからなのでしょう。大きな特徴の1つとしては「70s-80s」には無かった「Skyliner EQ」と言われるイコライザーをオーバードライブ回路に持つモデルが有りますが、この「Skyliner EQ」を内蔵することで音的にMarshall寄りになったと言えます。ここではあえて「90sの音」と言う事で区別したいと思います。そんなDumble-Amp「70s-80s」「90s」の中でやはり一番有名なモデル物が「OverDrive Special」と言われるモデルです。
 
 

about  Dumble Project

 
そのダンブルのもっとも近年に近い97s頃のモデルOverDrive Special(Dumble clone No.001)を再現しようとしたのが、このダンブルアンプ・クローン・プロジェクトの始まりです。

このプロジェクトは国内外で見られるクローン(もちろんTwo-Rock,FUCHSなどの有名なクローンアンプの詳細も研究済です。)とは違い、省いた物は全くなく「FET-INPUT」「PRE-AMP BOOST」「ROCK/JAZZ」「MID」「BRIGHT」もしっかり備えていますし、リアパネル上に有るトグルSWの動作まで一緒です。
勿論「SIGNAL ACCSES」も完備です。それに一つ一つの部品もサウンド第一に極力入手できるものの中でも選定品を使用しますので貴重なビンテージパーツを多く使用したpoint-to-point配線の完全ハンドビルドになります。 

では製作した「OverDrive Special No.001」の回路について少し説明したいと思います。
入力は本物と同じく「FET Input」と「Normal Input」の2つを持っており、「FET Input」はその名の通りFETを使用した回路で「Normal Input」の前に位置しています。次に「Normal Input」ですが、ここからが真空管による回路構成となっています。そしてそこから続くPRE-AMPですが「Bright」「Rock/Jazz」「Mid」のSWが有るのが特徴ですね。

Tone回路的にはオールドFender系をアレンジした感じの回路ですが他のメーカーでは見る事の出来ない回路となっています。まずBright-SWですが他メーカー同じ方法でVolumeのセンターへ高域をバイパスさせる方法です。そしてRock/Jazz-SWのJazzモードでは多少Gainは下がりますがBass-VRを切り離しVolumeへバイパスする様な回路構成を取り、よりふくよかな音に仕上げていますし、オーダーによってはMiddle-SWの変わりにDeep-SWと言ってさらに低域を膨らませた事もしています。

元々はそちらがメインで80s頃からMiddle-Boostなる物が現れています。方法はBoogieなんかと同じでTreble用コンデンサーの容量を上げる事で行っていますが、なんとシリーズ接続です。このプロジェクトアンプも勿論シリーズ接続で行っています。その他Pre-Boostと言う回路が有りTONE回路を切り離した様な形でPre-Amp部をBoostする事が出来、これもオリジナルと全く同じに作ってあります。以上の様なスイッチングを取り入れたTONE回路自体の使用感は思いのほか可変範囲が狭いと言う印象を受けますが必要十分な可変は得られる様に作ってあります。

年代やオーナーの要望で定数の変更は有るようですが基本的なDumble-Tone回路に大きな変化は無い様です。現に当方で調べたところの中ではラリーカールトンやロビンフォードのAMPがまったく違うTONE回路で作ってると言う情報はどこにも見る事が出来ませんでした。そしてクリーンモードではその後Signal Accses、いわゆるSEND/RETURN回路を経て直ぐにPOWER-AMP回路に送り込ませますので最低限の回路で音になると言う仕組みです。その「Signal Accses」ですが真空管レベルの信号なのでペダルタイプのエフェクターは全く使用でき無いのはもとより、そこに直接エフェクターをつなぐ事は考えていないらしく、その為にわざわざDumbleは「Dumblelator」なるオリジナルのEffector Driverも製作しています。ロビン・フォードなどはそれを使用してエフェクトをかけている様です。

そして問題のオーバードライブ回路ですが今主流のオーバードライブ回路の後にTONE回路が来る方式ではなくTONE回路の後にオーバードライブ回路が来ています。この辺はBooigeのMKⅡやMKⅢに非常によく似ていますが、このオーバードライブ回路の後にさらなるTONE回路「Skyliner EQ」を配している物がこの「'97s」モデル特徴です。これによりFenderでもなくMarshall寄りではあるがMarshallでもない音作りがされています。

参考までにTONE回路がオーバードライブ回路の「前」にあるか「後」にあるかで音はまったく違ってきます。Marshallは私の知る限りでは全て「後」に来ています、BoogieのRectifireもそうでし最近の名だたるAmpはほとんど「後」に位置するタイプです。しかしBoogieではMKシリーズは全て「前」に持ってきています、Fenderも「前」です。そんな事からも自分の好みが解って面白いですね。話は戻りまして「Skyliner EQ」ですがオリジナルは内部にPOTが配してある為コントロールする事が出来ませんが、このダンブルアンプ・クローン・プロジェクトでは外部アクセス可能にしてあります。先ほどの参考話を思い出して下さい、「Skyliner EQ」が有る事でオーバードライブ回路の「前後」にTone回路を配する形なのです。ですから基本音はFenderでもMarshallでもない音なのですね。

パワーアンプ部ですが使用したアンプの関係上EL34ではなく80sの6L6GCx2のパワー構成されています。Ch切り替え、Pre-Boostはオリジナルと同じくFoot-Swにて切り替えが可能です。

そして今回のプロジェクトでは、あえて素晴らしいFenderサウンドも残しました。いわば二種類のアンプヘッドを一台に凝縮したようなものです。あのクリーンサウンドが健在でBandMasterのRev-chをFender-Normal-ch部に移植してありますので、そのまま生きておりDumbleと切り替えてRevの効いたFender-Toneも使用可能です。

そして使用した部品ですがコンデンサーはDumbleの内部写真を参考に適材適所にオレンジドロップ、マイカー、セラミックを使用してありまし、線材は勿論オールドでAWG20を中心にして使用してあります。CH切り替えPre-Boostもオリジナルと同じリレー切り替えの為、劣化はほとんど有りません。電源部もまた電圧及び容量をDumbleに合わせ込みDumble回路へはSprague-ATOMで構成されています。勿論全体の半田はKester44(銀入り)での製作です。
 
Dumbleには基本的な回路があります。そこからアーティストなどから注文があった際にチューニング、アレンジしていくのが基本の流れです。Dumble Project もその点を踏襲してます。
アンプの基本回路はFender Bassmanでそこからオリジナル回路を製作したと言われてますが詳細はブラックファイル状態です。
 
実を言うと世の中に出回ってるDumbleアンプの回路図そのまんまで製作するとあんまり良い音じゃないと思っています。
母体となるアンプに合わせて最終的に「耳」でサウンドを決めている点が一番の違うポイントではないでしょうか。
ある程度組み上げてから、音を出しながらコンデンサ、配線材、真空管、ハンダ、コンボタイプならスピーカーなど変更していきます。実はかなりこだわって創ってます。
初期物のDumbleの回路を見るとLowBoost,Midシフトスイッチが付いてますがこれもあまり良い音ではないのでアレンジして現代でも使えるサウンドになってます。中でも内部配線材、ハンダはかなりこだわって適材適所で3~4種類ほど使い分けてます。コンデンサも場所によってヴィンテージ物、NOS物、現行品を使い分けてます。
真空管もマッチドで市販されてるものを使用するわけではなく現物合わせでサウンドを決め込んでいきます。
「これか?」「こっちか?」など実装して音を出して、交換して・・を繰り返し最後は自分の「耳」でサウンドを決めていきます。
最近は良質なパーツもな無くなりつつあり現存しているモデル達は貴重になるかもしれません。
世の中に販売されているDumble系アンプ達もそうかもしれませんがなかなか大変な工程を経て誕生していると思っていただけるとありがたいです。

最後に、
これは全てのDumble-Ampに言えると思いますが使用するギターの種類で音がリアルに変わります。言い方を変えますと使用するギターの音がそのまま出ると言った感じです。またピッキングのニュアンスが正確に出てくると言った感じで弾き手を選ぶアンプと言った言い方も出来るかと思います。